飯田市内から、15分程車で南に走ると、立ち並ぶ家の間隔がだんだんと広くなり、開けた場所からアルプスをぐるっと見渡すことができます。
その中の一つ、高鳥屋山の麓に、お百姓さんの直売所「たかどやファーム」と、肉牛400頭を飼育する「たかどや牧場」があります。
この「たかどや牧場」を経営するのが、今回ご紹介する宮崎吉弘さんです。
飯田市に旅行に来る方は、飯田市の食文化に少しびっくりされるかもしれません。とにかく、見渡す限りのアルプスと、どこを見ても焼肉屋ばかりの街並みです。
私が通勤する10分程の間にも、焼肉屋が7件もあり、会社の近くにまた新しく焼肉屋ができるようで・・・
飯田市民の胃袋を支えているのは、間違いなくお肉だと断言できます。
「飯田市の気候は、寒暖の差が大きいため、きめの細かい肉ができるため、牛を育てるのにとても適した環境」と語る宮崎さん。
そんな飯田市にあるたかどや牧場は、宮崎さんの父、光弘さんが、肥育経営の礎を築き、宮崎商事株式会社を設立しました。幼い頃から自然や牛と触れ合い、牛舎を遊び場に育った宮崎さんが、畜産王国である鹿児島への高校進学を決断したのは、自然の成り行きだったのでしょう。
高校卒業後は、牛の取引先である京都の肉屋の老舗、「モリタ屋」で研修し、飯田へ戻ります。そこで、肉牛部門を任された吉弘さんが社長を務める「たかどや牧場」を設立、父が築いたものを吉弘さんが更に発展させていきます。
黒い牛に迎えられ、たかどや牧場に入ると、たくさんのお客さんで賑わっていました。
「ここには毎週通ってる。近くにこんなに便利なお店があって嬉しい」
そういった地元の方のお話を聞くことができました。特になにか欲しいわけでもないけど、寄ってみるのが楽しいんだよ、と笑顔なのは近所に住むというおばあちゃん。
地元農家200人ほどが並べる店一杯の野菜や果物は、地元の土と水で育った、正真正銘、飯田産。売上の半分はお肉が占めているそうで、「たかどや牧場のお肉でないと」と、県外からもお客様が通うほど。たかどや牧場の牛は、食べるものも、りんごやおから、わらなどすべて地元で採れたもの。地元の水、食べ物、環境で育った、飯田産の牛です。
コロッケなどのお惣菜も充実。冷凍しておいて食べれるのは、嬉しい!
たれも、もちろん信州の手作りです。
「自分の牛の味がわかる人に、食べてもらいたい」という宮崎さんの強い思いは、信州で育った牛の認知度を高めるため、信州の牛として登録、ブランド化も視野にいれていますが、生産量など課題もあり、「自然な流れでブランド化できたら」とまずは自分の店で地域の方に愛される肉になることが一番の目標です。
そんなたかどやファームは、宮崎さんと奥さんの二人で切り盛りし、二人の娘さんも自分たちの牛を持って育てるなど、家族全員が携わっています。
まだ幼いうちから自分の牛を、食べるために育てる。既に一口サイズにスライスされたお肉をスーパーで買う時代に、毎日のエサやりに掃除に苦労を積み重ねて大事に育てた牛を、自分たちで食べる。そんな便利化されていないシンプルな生き方が、すごく素敵に思えました。
―でも、毎日愛情込めて育てたら、可哀そうで食べられなくなっちゃいませんか?
宮崎さん「いえいえ、娘二人とも、早く食べたい!って楽しみにしてますよ。」
とても頼もしい娘さんたちですね!そんな娘さん二人とも、父の働く姿を見て、将来は食育に携わる仕事に就きたいと言っているようです。父に憧れ、同じ道を歩むと決めた女の子二人のこれからが、とても楽しみですね。
そんな宮崎さん一家の食卓に毎日必ず並ぶもの、それはお肉です。毎日肉を見ていたら、違うものが食べたくなるのでは?と思いましたが、家族全員無類の肉好きだそうで、豚、鳥なども含め、お肉ならなんでも食べるそう。
―お魚は、食べないですか?
宮崎さん「普段は食べないけれど、旅行に行ったときは食べますよ。牛がいるから休みっていうのはないんだけど、広島へ旅行で行ったとき、ふぐのコースを食べて、あれは美味しかった。」
直売所の中はほとんど地元産の野菜やお惣菜など。
(これから冬に活躍する信州ねぎだれ)
冷凍庫に大量にあるこちら。コーンかな?と思いきや蜂の子でした。
給食に出ていたソフトめんがあってびっくりしました。麺類も地元で作られています。
ヨーグルトもトマトジュースも信州産!
たかどや牧場のお肉は、地元の温泉街である昼神温泉や、元徳、ほんのり屋など、美味しいと評判の焼肉屋に卸しています。私の好きな焼肉屋さんにも卸していると知り、たかどや牧場産のお肉で私も育ったんだなあーとしみじみ感激してしまいました。私を育ててくれた地元の野菜やお肉たちに、感謝感謝です。
お百姓の直売所 たかどやファーム
〒395-0244
長野県飯田市山本951