友人の結婚式に出席した時、引き出物でカタログギフトを頂きました。
贈り物って、相手の好みを調べたりと、なかなか気疲れしてしまうものですが、カタログからだったら楽しく自分の好きなものを選ぶことができて、いい方法ですよね。
そんなカタログギフトに疑問を抱いたのが、下久堅にある雑貨屋hyggeのオーナー、安田瑞恵さんです。
「確かにカタログギフトは便利だけれど、ネットで検索すれば値段やなんかがわかってしまうし、どこで作られているかわからない。なんだか味気ないと思ってしまいました。」
そう考えるきっかけになったのは、偶然にも数日前に挙げた自分の結婚式。
地元である飯田市で自分のお店を持っている安田さんは、大事な友人や家族に感謝の気持ちを込めて渡す引き出物も、自分が本当に良いと思った物を贈りたいと考えました。
安田さんの営む雑貨屋hyggeは、飯田市下久堅にある、Fukuumeの中にあります。
建物の中の小道を歩いていると、左手にあるのがhygge。
隠れ家のようなのに、窓の外に広がるのはアルプスの間をかき分け流れる天竜川。
その解放感と、安らげる水の音がとても印象的でした。
安田さんが自分のお店を持とうと思ったのは、高校を卒業し、地元で美容部員として働いていた25歳のときでした。
自然豊かな伊那谷の環境が、生まれ育った安田さんには、足りない物ばかりだったといいます。
「不満だらけの毎日でした。人にも、町にも、自分にも。あるとき、自分はこのまま不満だけ抱えている人間でいいんだろうかと思ったら、それはだめだと思ったんです。今のままではだめだけど、何をすればいいんだろうと考えたとき、人に雇われていたら何も変わらない。自分でお店を持つしかないと思ったんです。」
自分の部屋をリフォームしたことをきっかけに、自分で何かを手掛けることが一番楽しいことだと気付き、両親の反対を押し切って東京へ。2年という制約付きの中、インテリアショップでアルバイトから始めました。
「それまで美容部員としてのキャリアがあったけれど、先輩は年下。全てが未経験だったので、プライドを捨てるところから始めました。ラッシュ時の電車にも慣れず、足りない生活費を工面する為に早朝のパン屋のバイトもあって、毎日が怒涛のように過ぎていきました。」
そんな生活の中、あるとき安田さんは、鏡に映る姿が、愚痴も不満も言わない満ち足りた自分であることに気が付きました。
「もちろんやりきれないこともあったけれど、周りの後輩や同僚も、みんな人一倍頑張っている人ばかりだった。そんな人たちに、文句なんて何もない。気が付いたら時が経って自分が教える立場になり、仕事が楽しくてしょうがなかった。」
そんな時に迫った、両親との約束。心は東京に傾いていたところを、ご両親は見据えたのかもしれません。やり出したことは最後まで頑張りなさい、と背中を押してくれました。
ご両親の後押しもあって、東京で過ごす楽しい日々。ですが、次第にこれでいいのかと考えだし、自分が何をやりたくて東京に来たのかもう一度考えました。両親に恩返しをしたいという思いも連なり、お店を持つという当初の目標のために、飯田へ帰省しました。
開業資金を貯めるために働いていたカフェFukuumeの2階の店舗が空いたとき、チャンスに飛び込みました。
店舗内は改装が必要でしたが、そこで全面サポートしてくれたのが、今の旦那さんです。
「ここの壁、自分で塗ったんですよ。」
「瓦屋である旦那さんが、漆喰をとても安く仕入れてくれて。ほんとだったら10数万かかるところが、原価で済みました。塗り方も教えてもらって、要らない壁を撤去するときは、旦那さんがハンマーで壊してくれて、私はいそいそと壊れた壁を捨てていました(笑) ここは、二人で作ったお店です。」
安田さんがお店を出すにあたって、自身も自営業の旦那さんは全面的に協力してくれました。
そんなお二人の結婚式、安田さんは参列してくださる方には感謝の気持ちを表すのにどうしたらいいんだろうと悩んだとき、カタログギフトを自分で制作することに決めました。
それは、Uターンで帰って来たからこそ、食べ物の美味しさや人の温かさを身に染みて感じ、結婚式を通して地元に貢献するにはどうしたらいいかを考えた結果でした。
こちらが安田さんの作ったカタログギフト。
飯田産のくりん豚は、飯田市民にとって身近なお肉ですね。
このカタログに載っているのは、全て飯田産の食材やお店ばかり。
食・物に限らず、女性には嬉しいオーダーメイドのアクセサリーやネイルサロンのコースも。
もちろん、飯田にあるお店です。
自身がお店を営んでいるからこそ、飯田に還元できる仕組みを作ったのがこのカタログギフトです。
「飯田に限らず、南信州には、本当に価値のある良いものがたくさんある。食もそうだし、そういった生産者に経済の効果が循環していければいいなと思います。」
安田さんは、飯田で生まれ育ったからこそ、豊かな自然だけでは満たされない部分があることに気が付きました。
東京に行ったことで、洗練されたデザインや知的な感性を満たしてくれる文化など、そういったものに触れることで自身を成長させ、感性を豊かにすることができたといいます。
「世の中にはこんなにかわいくて素敵なものがたくさんあるのに、それを知らずに生きている人がいる。私が飯田でお店をしているのは、少しでも多くの人に、かわいいもの、素敵なもので刺激を受けてほしいと思っています。それを伝えるのが私の仕事です。」
Accesory&Zakka hygge
オーナー 安田瑞恵
長野県飯田市下久堅知久平1800-4
0265-29-6067
hygge