なんの前ぶれもなく、大正時代から続く、和菓子店を引き継ぐようになったのがきっかけでした。
東京のフレンチレストランで働いていた北澤さんと、パティシエの弟さん二人で飯田に帰郷。
家族の力を借りて、飯田市山本にある自然に囲まれた土地で、
「ケーキとビストロ 美城」を営んでいます。
北澤さんがランチやディナーでフレンチを担当し、弟さんがショーウィンドーに並ぶケーキを作ります。
お互いに支えあい、コースのデザートを弟さんが担当したりと兄弟で見せる連携プレーが美城の強み。
時々ある意見の違いが、お店をよりいい空間へと、成長させているようです。
ケーキとビストロ美城では、飯田下伊那の食材が、ふんだんに使われています。
あるとき、こんな出来事がありました。
「このトマトがすごく美味しい、と思って買付に行ったら、同級生が作ってました。甘みがあって、なんというか、味が濃い。それから、契約してうちで使わせてもらうことになりました。」
同じ食という仕事に携わる思いに共感したお二人。
同級生の作るトマトが、北澤さんの手でより美味しくなって、お皿に並びます。
地元といえど、農業は日々進化しています。
どこに美味しい食材があるのか、アンテナを張り巡らせての食材探し。
あるときは、地元の農業高校の先生がお客様として来店され、信州黄金しゃもの存在を教えてもらいました。
どこで手に入るのかを訪ね、さっそく買付け、メニューに取り込みました。
「都会のレストランで働いているときは、お肉はどこの店、野菜はどこの店と仕入れ先が決まっていました。こういう風な形で、人づてに食材を仕入れていくということは都会ではない、田舎の大きな魅力だと思っています。」
日々新しいことにチャレンジしている―
北澤さんのプレートの上には地元の人たちが食材に込める熱い想いで溢れています。
(レストランから見えるのは、美城で作っている小さな畑。ここでは、ハーブやシイタケ、木苺やブルーベリーなどが育っています。)
フランスにある田舎町で、一軒だけしかなかったというレストランでの研修時代。
大量のザリガニを料理したりと、日本ではできない経験を積む中で、まかないで食べていたという、ローストチキン。
丸ごと一匹の鶏を、オーブンに入れて焼いただけというとてもシンプルなものなのに、それが桁違いに美味しかったというから驚きです。
何が違うんだろう、そんなことを思いながらも、故郷を遠く離れたフランスの田舎での生活で、地元の美味しい食材を食べる、そんな小さなことが、一滴の水が大きいつららになるように、北澤さんの心の中で料理人としての何かが作られていったのでしょう。
田舎の中にあるフレンチレストランには、子供からお年寄りまで、色んな方が集まります。
「都会では、お店ごとに来る客層だったりが限られているけれど、田舎のお店には、本当にいろんな方が来る。どんな人が来ても楽しく食事ができるよう、フレンチだけど箸を用意したりと、メニュー以外でも工夫をしています。」
(弟さんの作る焼き菓子。遊び心に溢れた可愛らしいデザインで、ついついもう一つ・・・)
最後に、おすすめのメニューはなんですか?と尋ねると、この飯田人通信コーナーでもご紹介した、たかどや牧場さんの黒毛和牛を使った料理がおすすめだとのこと、小さい田舎まちだなあとつくづく実感致しました(^^)
地元の美味しい食材が、北澤さんの魔法でさらに美味しくパワーアップした料理を、みなさん是非、味わってみてくださいね。