日頃から、役場の方たちと交流させて頂いて感じることが、空き家はどんどん増えているのに、なかなか上手に活用できないということです。
住み手がなくなった家を、何年も空いた後ようやく売ろうと決断したときには、家の傷みが目立ち、次に住む方がなかなか見つからなくて困っている方が多いです。
「家を売る」という事は、そこに住んでいた大事な想い出を処分するのと同じことですから、なかなか決断できないのも仕方がないような気もします。
ですが、家の価値がただ目減りしていくのを見ているのも、不動産に携わるものとしては、正直少し心苦しいところがあります。
増える空き家をなんとかし、将来の住み手を地域に呼び込もうと奮闘している自治体も多い中、民間と行政が上手に協力して空き家の活用に取り組むのが、蛍で有名な上伊那郡辰野町です。
今回は、清内路空き家の会に同行して、どんな活動をしているのか空き家活用のヒントを得るため視察に参加させて頂きました。
辰野町でも、数年前から空き家の増加を真剣に考える機会があったようですが、空き家バンクを設置して住民の方からの申し出を待つだけでは、空き家に対する考えも浸透しづらく、登録件数も少なかったようです。
そこで、民間の企業として設計に携わる方や建築の知識がある方を集落支援員と地域おこし協力隊に迎え、イベントを通して地域の方を巻き込む活動を始めました。
空き家には、すぐに住み手が見つかるものと、何年経っても空き家のままになってしまう物件があります。
両社の違いは、その家に対する「魅力」と、住んだ後の生活の想像のし易さにあるようです。
比較的新しい家では、現代のライフスタイルにあった間取りなどがそのまま次の所有者の生活とも一致することがあり、次の住み手もすぐに決まることが多いです。
しかし、築年数の古い家は、家が古いだけでなく、何世帯もの家族が一つの家で一緒に暮らしているライフスタイルを反映した間取りが時代遅れとなり、部屋数が多すぎるなど難点が多いです。
そんな古い空き家でも、見る人が見れば魅力的、価値のある物件になると視点を変えたイベントが、面白いと話題になっています。
「空き家トレジャーハントツアー」
古い家にありがちな、前の所有者の持ち物。処分をするにもお金がかかることから、片付けもなかなか進まない。
そこで、欲しいものを見つけたら、自分の言い値・・といっても持ち主にとっては処分品なので、100円からと気持ち価格で交渉する片付けイベント。
自由に家の中を散策して宝物を発見するような気分を味わえると、参加する人の好奇心を掻き立てているようで、何度も開催する人気のイベントになっているようです。
次のイベントを控えている空き家を見させてもらいましたが、迷子になってしまうような広い間取り、予想外の場所にある隠し部屋や倉庫、お風呂など、探検しているだけでもとても楽しかったです。
そうして、数千円から数万円になった売り上げが、片付け費用となり、売主の方にとっても一石二鳥。
また、そうして注目を集めた家を見て、「この家が面白そうだから、住んでみたい」と思ってもらえる人も現れ、現在古民家カフェとして改装中なのが、こちらの家です。
住み手が見つかっただけでも十分なところ、ただ改装するだけでは面白くない、とさらに次のイベント
「空き家リノベーションイベント」としてしまうのが、また面白い発想ですよね。
構造部分の修復はプロにお願いし、フローリングの張替えや漆喰塗などは、左官屋さんなどを講師に迎えて、地域の方やリノベーションに興味があって参加する方みんなで協力して行うことで、改装費用を安く抑えながら、この家に関わるファンを増やしていく。
そうして色々な方を巻き込んでいくことで、空き家の活用ってこんな風になるんだと地域の方にも周知され、空き家バンクの登録件数も加速度的に増えているとのこと。
人と人との繋がりも広がっていき、あそこの家が空いている、と人づてに情報があがってくるようになったのも、こういったイベントの産物ですよね。
ただただ空き家が増えている、と行政が認識していても、地域住民の方にはそれが自分たちの住む地域の問題として伝わらないのが現状としてありますが、こうして斬新なアイデアを通じてイベントを実行することで、空き家が活用されることが地域にとってもプラスになるということが伝わり、周辺住民の方の意識も少しずつ変わってきているようです。
そうやって、地域の方が少しずつ動き出し、地元の方、行政、民間の企業が上手くそれぞれの役割を分担しながら動くことが、空き家の解消に繋がっていくような、道筋が見られたような気がします。