高森町は長野県南部、下伊那郡では北部にある町だ。
東には南アルプスが望め、天竜川の河岸段丘にある。
この河岸段丘の地形を活かした果樹栽培が盛んで、市田柿は下伊那地域の特産となっている。
長野県は観光地であるが、当社の拠点、長野県の南部には目立った観光地がない。
それでも自然豊かな場所を目指し、春から秋にかけては、少しは賑やかになるので、普通の地方である。
本社が東京ある会社に就職し、地方を転々としながら、言われるままに働き、生活してきた。
特に不満はなかったが、ある年齢になったころから、自然豊かな場所に落ち着きたくなった。
パワハラやセクハラが厳しく非難される前、会社員であることは、組織に隷属することであった。
時代の要求通り、多くの人が不条理に、24時間も戦っていた。
慌ただしく過ぎる日常に、辟易していたからかもしれない。
見たいものがあればどこへでも出かけ、どこにでも住める若さも関係していたのだろう。
この地に住むことを突然に決めた。
どこに住むか、不動産との出会いは、その多くが、ご縁である。
この河岸段丘にあり、縄文から古墳時代の遺跡が豊富な場所に住むようになって、はや10年以上が過ぎた。
長野県も転々としてきて、住む場所を決めるという一大事に、どのような基準で意思決定をしてきのか定かではない。
何となく分かっていることは、理論的、合理的よりも、なんとなくの”面白さ”を探してきたからだと思う。
高森町の段丘の一番上を南北に走るワインディング・ロードは野生動物の出没ロードでもある。
このロードは、昭和から平成の初めまでは、連日賑わっていたことを思わせる温泉施設、湯が洞を起点として、北に7kmほどいくと、あっけなく終点となる。
しかし、中央アルプスの眺望はどの場所よりも素晴らしく、この道路沿いには、車10台分程度の展望台を兼ねたスペースが3か所ほどある。
天竜川、中央アルプス、果樹園の風景は多くのカメラファンも魅了し、キンキンに冷えた朝は特に人気らしい。
廻りの木々もすっかり葉を落とし、いよいよ冬本番の訪れとなると、山の景色がいっきに変わる。
澄んだ空気は、特別な空間を演出し、冬時間に楽しみを与えてくれている。
段丘に沿って南北に走る通称、ハーモニックロードと呼ばれるロード沿いの中間に、数年前からオープンするカフェがある。
そのカフェがある建物は、平成の真ん中頃は蘭の植物園であったらしい。
閉園してしばらく経過した建物は、当時を思わせる雰囲気は全くなく、ひっそりとしている。
建物入口にある看板が、「カフェ いるもんで」を案内しいるので、迷いなく建物に入ることができた。
建物内部は地方の図書館を思わせる。
静かな空気感に最初は戸惑ったが、店内入口のメニューを見て、カフェがあることにほっとした。
どうやら、階段をあがったところが、目的のカフェらしく、この安心感が階段を昇る足を軽快なものにしてくれた。
店内は明るく、南アルプスが出迎えてくれた。
見慣れた景色ではあるが、高揚感へと導いてくれるのは、この地の魅力だと自信を持っている。
注文は迷わず、ランチプレート。
なんとも清々しい食後感は、ここからの南アルプスの眺望と、手作り感たっぷりの食事の質の良さが、感じさせてくれるのだろう。
丁寧に下ごしらえされた副菜は、小鉢、サラダ、デザートから構成さてれいる。
レジ横では、高森町で栽培されているレモンが250円で売られていたので、迷わず購入。
5個も入っていたので嬉しくなった。
夜はジンにこのレモンを絞り、グビッと飲んだ。