夏休みも終わって、聞こえる蝉の声もだんだんと小さくなってきたような気がします。
青い空が、なんだか切なく見える土曜の飯田市立動物園。
日傘を差したお母さんと、白地のTシャツが余計に日焼けした肌を際立たせている小学生たちで、園内は賑わっていました。
丘の上にある飯田市立動物園は、周囲をぐるっと囲むアルプスと、江戸時代に栄えた城下町が見下ろせる、ちょっとした隠れ家のようなスポットです。
小さいながらも、可愛い小道のような園路の周りに、ちょうどいいバランスで配置された動物たちは、さながら絵本の中に出てくる動物たちの世界に紛れ込んだようで、
園内を散歩しているだけで、楽しい気持ちになってきます。
山の傾斜を利用した動物園が多い中、町の中の平な土地、しかも丘の上にある動物園は珍しく、ベビーカーで午後のひと時を過ごすお母さんが、とても多いそうです。
そんな飯田市の動物園に魅了され、遠く離れた地からやってきて、腰を据えた飼育員さんがいます。
岡山県倉敷出身の、前 裕治さんです。
小さい頃から動物が大好きで、家にはウサギ、犬、うずら、あひる、ハムスターなどたくさんの動物に囲まれて育った前さん。
大学では生物学を学び、卒業後は教師の道に進みましたが、大学時代から夢に描いていた、動物園の飼育員としての道を選ぶ決意をし、退職。
動物園でアルバイトとして働く一方で、空いた時間を利用して日本全国の動物園を見て回りました。
北から南まで、様々な動物園を見ていくうち、どんな動物園が面白くて、楽しめるか、そんな視点での経験が、より多くの人が動物園で楽しめるためにできることを考えるいい糧になったようです。
前さんと初めてお会いした時は、物静かで控えめな印象を受けました。
ですが、自分の夢の為に一直線な姿勢と、動物園が本当に好きだという熱意で全国を飛び回ったというフットワークの軽さ。「丘の上の小さな動物園」には収まらないような大きい想いを抱いた飼育員さんです。
そんな前さんが初めて飯田市立動物園を訪れたとき、他の動物園にはないような独特な雰囲気に魅了されました。
「小さい動物園なのに、希少な動物も多く、なんだか言葉では表せない雰囲気があって。岡山に帰っても、飯田の動物園の事が、忘れられなかったんです。」
飯田市立動物園の求人を偶然見つけたとき、前さんは迷わず岡山を離れ、飯田市にやってきました。
前さんの一日は、動物に餌をあげることから始まります。
「それぞれの動物に個性があるんです。この子は、いつもこの色の野菜から食べはじめるとか、そんな姿を見ています。」
園内で多く開かれるイベントも、飼育員さんたちが自ら考えたイベントです。
今日は、前さんの「動物のうんちで紙を作ろう!」という企画にお邪魔させてもらいました。
大人の私は少し抵抗がありましたが、それぞれの動物のうんちに子供たちは興味津々でした。
ミキサーで砕いたものにのりを加え、それをアイロンで平たくすると、あっという間に紙ができあがります。
面白い発想だなーと思いながらもびくびく見学する私より、子供たちの方が勇気があって、身を乗り出して紙になっていく過程を見ていました。
子供たちからの質問にも、丁寧に答えていく前さんに、子供たちも楽しそうに参加していました。
夏休みにこんなイベントがあったんて少し驚きましたが、子供たちでも、大人でもいい勉強になりそうですね。
暑い中、家に籠らず外に出てみるといろいろ学べて、私もいい機会になりました。
子供たちの要望があればポニーを外に出したり、ミニブタを散歩させたりと、前さんの一日はまだまだ終わりません。
「ポニーのご機嫌にもよりますが、散歩になかなか動いてくれない時もあるんです。体をちょっと触ったりしてコミュニケーションを取りながら、散歩に促したりと、なかなか大変です。」
そしてこの夏休み、夜にまたイベントがありました。
「ナイトズー」といって、9時半から、夜の動物の様子が見られるイベントです。
ライトアップされた園内では、夜行性の動物のエサを食べる姿なんかが見れるようで、19時半前から動物園の前に並ぶお客さんたちで丘の上が賑わっていました。
残念ながら私のカメラでは何も写らず真っ暗な写真になってしまったのでお見せできないのが残念です。
また来年、お盆期間中の短い間ですが、興味のある方は、是非行ってみてくださいね。
小さな丘の上で、たくさんの動物に、こんな素敵な飼育員さんと一緒に学べるイベント盛りだくさんの動物園に、みなさんも次の土日に是非出かけてみてはいかがでしょうか。
飯田市立動物園
営業時間9:00~16:30
月曜休み